テレワークの定着やクラウドサービスの普及にともない、社外から社内ネットワークに安全にアクセスするための「VPN」の重要性が増しています。なかでも注目されているのが、自社にVPN機器を設置する必要のないクラウド型VPNです。
従来型のオンプレミスVPNは、機器の購入・設定・保守に手間とコストがかかるうえ、テレワーク利用者の急増で通信が逼迫するリスクもありました。クラウド型VPNなら、こうした課題を解消しつつ、拡張性の高いネットワーク環境を構築できます。
この記事では、法人向けクラウドVPNサービスの特徴と選び方を整理し、主要なサービスを比較していきます。ゼロトラストとの関係性にも触れるので、セキュリティ戦略全体を見直したい方もぜひ参考にしてください。

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クラウド型VPNとオンプレミス型VPNの違い
オンプレミス型VPN
自社のオフィスや拠点にVPN機器(ルーターやファイアウォール)を設置し、社内ネットワークへのアクセスを制御する従来型の方式です。自社でハードウェアを保有するため、カスタマイズ性は高い一方、機器の購入費用・設定の複雑さ・障害対応の負担が課題になります。
クラウド型VPN
VPN機能をクラウド上で提供するサービスです。自社に機器を設置する必要がなく、Webの管理画面から設定や利用者管理が行えます。利用者数の増減にも柔軟に対応でき、テレワーク人数が変動する企業でもコストの無駄が出にくいのが特徴です。
クラウド型VPNは「初期費用を抑えて、すぐに使い始めたい」企業に向いています。一方、機密性の高いデータを厳密に管理する必要がある場合や、完全に自社管理のネットワークが求められる場合は、オンプレミス型のほうが適切な場合もあります。
なお、クラウド型に切り替えても、オフィス側の出入口になるルーターが古いままだと接続数が増えたときに詰まりやすくなります。同時接続に余裕のある法人向けモデルへ更新しておくと、後からの手戻りが減ります。
法人向けクラウドVPNサービスの比較
Arcstar Universal One(NTTコミュニケーションズ)
Arcstar Universal Oneは、NTTコミュニケーションズが提供する法人向けVPNサービスです。拠点間接続・クラウド接続・リモートアクセスを一つのサービスで提供しており、大規模ネットワークの構築に強みがあります。NTTグループの通信基盤を利用するため、通信品質の安定性には定評があります。
SmartVPN(ソフトバンク)
ソフトバンクが提供するクラウド型VPNサービスで、「Cloud Ready」をコンセプトにクラウドサービスとの親和性を重視した設計が特徴です。AWS・Azure・Google Cloudなどの主要クラウドとの接続に対応しており、マルチクラウド環境を構築する企業に適しています。
だれリモVPN
国産アプライアンス型のVPNサービスで、IT専任者がいない中小企業でも導入しやすい手厚いサポートが特徴です。設定代行サービスも提供されており、「VPNを導入したいが技術的な知識がない」という企業に適しています。
NordLayer
NordLayerは、個人向けVPNで知名度の高いNordVPNの法人版です。ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)の考え方を取り入れており、ユーザーの認証とデバイスの状態を確認したうえでアクセスを許可する仕組みを備えています。グローバル拠点を持つ企業や、海外出張が多い組織に適しています。


クラウドVPNの選び方
通信速度と安定性
VPN経由の通信は暗号化処理のぶんだけ速度が低下します。テレワークでWeb会議を頻繁に行う場合は、通信品質の低下が業務に直結するため、無料トライアル期間中に実際の通信速度を計測しておくことが大切です。
計測してみて思ったより出ない場合、原因が古いLANケーブルにあることもあります。カテゴリ6A対応のものに替えるだけで頭打ちが解消するケースもあるので、機器の入れ替えより先に確認しておくとよいでしょう。
同時接続数と拡張性
テレワーク利用者が増えたときに、スムーズにライセンスを追加できるかは重要なポイントです。オンプレミス型では機器のスペックが上限になりますが、クラウド型なら管理画面からライセンスを追加するだけで対応できるサービスが多いです。
対応するクラウドサービスとの連携
社内システムをAWSやAzureに構築している場合、VPNサービスがそれらのクラウドプラットフォームとの接続に対応しているかを確認しましょう。専用の接続サービスを使えば、インターネットを経由せずに閉域でクラウドにアクセスできるため、セキュリティが向上します。
VPNの限界とゼロトラストの考え方
従来型のVPNは「社内ネットワークに入れば安全」という前提に基づいていますが、一度VPNに接続されると内部のリソースに広くアクセスできてしまうというリスクがあります。このリスクに対応するのが「ゼロトラスト」の考え方で、VPNだけに頼らず、アクセスのたびにユーザー・デバイス・場所を検証する仕組みを構築します。
クラウドVPNのなかにもゼロトラストの概念を取り入れたサービスが増えており、VPN導入をきっかけにセキュリティ全体を見直す企業も多いです。
無料のVPNサービスは通信速度の制限やログの収集が行われていることがあり、法人利用には適しません。企業の機密情報を扱う通信には、信頼できる有料のVPNサービスを利用してください。
クラウドVPN導入時の注意点
社内ルールの整備
VPNを導入しただけでは安全とは言えません。「VPN接続中にしてはいけないこと」「VPN未接続で業務ツールにアクセスしてよいか」など、利用ルールを明文化しておく必要があります。
二要素認証の併用
VPNのID・パスワードが流出した場合のリスクを軽減するため、二要素認証(MFA)の導入を強くおすすめします。ワンタイムパスワードや認証アプリとの組み合わせにより、不正アクセスのリスクを大幅に下げられます。
障害時の代替手段
クラウドVPNはサービス提供者側の障害で接続できなくなるリスクがあります。障害発生時に業務が完全に止まらないよう、代替の接続手段(リモートデスクトップなど)を用意しておくと安心です。


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よくある質問(Q&A)
Q. クラウドVPNの費用相場はどのくらいですか?
サービスや利用人数によって大きく異なりますが、中小企業向けのクラウドVPNであれば月額数千円から数万円程度が目安です。大規模拠点間接続になると月額10万円以上になるケースもあります。まずは資料請求や見積もりを取ることをおすすめします。
Q. VPNとゼロトラストはどちらを導入すべきですか?
どちらか一方ではなく、段階的に組み合わせるのが現実的です。まずVPNで基本的なリモートアクセス環境を整え、その後ゼロトラストの要素(多要素認証・端末認証・アクセス制御)を段階的に追加していくアプローチが多くの企業で採用されています。
その多要素認証を、スマホアプリではなく物理キーで運用したいという相談もよくあります。FIDO2対応のセキュリティキーなら、まず管理者やVPN管理アカウントから配って段階的に広げるという進め方ができます。
Q. 個人向けVPN(NordVPNなど)を法人で使ってもいいですか?
個人向けVPNは社内ネットワークへのアクセス機能がなく、主にインターネット通信の暗号化やIPアドレスの秘匿を目的としたサービスです。社内システムへのリモートアクセス用途には法人向けVPNサービスが必要です。
クラウドサービスを安全に使うなら、周辺機器の見直しも効果的です。ストレージ環境を整えるヒントはこちら。
まとめ
クラウド型VPNは、機器の購入・保守が不要で、テレワーク人数の変動にも柔軟に対応できるため、中小企業から大企業まで幅広く導入が進んでいます。選定の際は「通信速度」「同時接続数」「クラウド連携」「ゼロトラスト対応」の4つの観点で比較することをおすすめします。
VPNは企業のセキュリティインフラの基盤です。コスト優先で安易に選ぶのではなく、自社の業務要件やセキュリティポリシーに合ったサービスを選びましょう。


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